平成27年度重要判例解説で,私が主に担当している倒産事件のものを調べてみました。
東京地裁平成27年3月17日判決(金融・商事判例1473号38ページ)は,興味深い事例です。
親が死亡し,子2人が2分の1ずつ相続分を持っているときに,子の1人が破産する直前に,もう1人の子に全ての遺産を帰属させる遺産分割をすると,債権者を害する行為として,破産管財人による否認権行使の対象となり,破産管財人が遺産を取り返す等してお金に換えて債権者に分けられることになるのが原則です。
前述の裁判例は,共同相続人である長男と次男で,長男が法定相続分である2分の1を超える遺産を取得した後,次男が破産した事例です。
名主として代々長男が土地を取得して守っていく風習があったことや,長男が寺院等との宗教上のつきあいで今後多額の出費をする見込みであること等を考慮して,実質的には次男の債権者を害していないとして,否認権行使の対象になりませんでした。
名主の家柄であった等特殊な事例ですが,遺産分割を行った後に弁護士に依頼される方等の助けになる可能性がある裁判例です。