新型コロナウイルスと資金繰り

1 新型コロナウイルスと資金繰りの悪化

新型コロナウイルスの関係で,資金繰りが悪化している会社や個人事業主さんが非常に多くいらっしゃいます。

日々状況は変わっていますが,この記事の執筆時点では全国に緊急事態宣言が発令されており,外出の自粛等で経済活動はこれまでにないほど停滞しており,いつ終了するかも分からない状況です。

売上が大きく減っていることから,事業所の賃料,従業員の給料,税金,その他の経費の支払いが難しくなっている方も少なくありません。

ここでは,新型コロナウイルス関係で資金繰りが悪化した方ができる,資金繰りをよくする方法を3つ紹介します。

2 税金,水道光熱費の支払猶予

税金,健康保険料,厚生年金保険料は,支払が遅れれば,直ちに財産や売上の差押えをする点で,資金繰りを考えるうえで注意が必要なものです。

しかし,新型コロナウイルス関係で,国税に関しては国税庁,地方税に関しては総務省のホームページに,年金保険については年金機構のホームページに,最大1年間の支払猶

予が受けられる制度がのっています。

個別の相談は,既に分割払いの合意をしている場合はその担当部署と,そうでなければ納付書を送ってきている連絡先に相談されることになります。

また,水道光熱費も,支払が遅れ続けると,ライフラインがとまってしまう危険があるので,何の連絡もせず支払いをしないのは危険です。

各電力会社,水道局,ガス会社と話し合う必要があり,地域によって異なりますが,積極的に支払猶予を打ち出しているところが多くあります。

私の住む名古屋市も,名古屋市水道局のホームページに,支払が困難になった方向けの支払猶予の相談先が掲げられています。

実際支払いが難しい場合でも,口座からの自動引き落としになっていると,自動的に支払われてしまい,従業員の給料や皆さんの生活費が捻出できなくなっては困りますので,引落口座から出金して残高不足にしておいたり,自動引き落としの契約をやめることで,支払を止めることも検討できます。

3 賃料の支払猶予

事務所の賃料も,賃貸人又は管理会社に,支払の猶予や賃料の減額の相談をしてみることをお勧めします。

賃貸人が取引先の賃料を免除した場合の損金処理を認める措置や,猶予に応じた場合の固定資産税の納税猶予等の制度が作られています。

仮に長期間賃料が支払えなければ,最終的には退去を求められますが,強制的に退去させるためには,裁判を通じて判決を取得する必要がありますし,

一般に3ヶ月程度滞納しなければ退去まで認められないことが通常です。

これも引き落とし口座から出金しておいたり,自動引き落としの契約をやめることで,支払を止めることも検討できます。

4 金融機関の返済猶予

金融機関への返済も,連絡なくやめてしまうと,借入のある銀行口座が凍結されたり,一括請求されるおそれがあります。

そこで,金融機関にリスケジュールという元本の返済猶予(利息のみ返済)をお願いすることが考えられ,最初は応じてもらえる可能性が高まっていると思われます。

ただし,リスケジュールをお願いすると,少なくともその金融機関を通じた新規融資は受けづらくなります。

また,リスケジュール中に利息の支払いもできなくなると,やはり口座凍結等のリスクがでてきますので,事業の再生に詳しい弁護士に相談しながら,資金繰りを考えていくこ

とをお勧めします。