令和3年4月の所有者不明土地の解消に向けた法改正

令和3年4月21日、所有者不明土地の解消に向けた法改正が成立し、4月28日に交付されました。

土地の名義人が亡くなっている場合、相続が何代も続いて何十人という相続人が土地を共有していたり、行方不明になっている方もいて、対応に困ることが多々ありました。

今回の改正は幅広い内容を含んでいますが、その中でも影響が大きいと思われるものを3つご紹介します。

1 隣地の使用関係(新民法209条、213条の2,233条)

隣の土地を使用できる場合について、これまでは、建物の築造・修繕や、排水のために水を通す等を限定的に記載し、他の場合に使用できるか明らかでありませんでした。

今回、隣地の使用を、境界標の調査や測量、越境した木の枝の切除、ライフライン設備の設置等にも認めることを明記しました。

ただ、越境した木の枝の切除は、隣の木の所有者に対して切るよう求めたが相当の期間内に切除しないか、木の所有者が不明のとき及び急迫の事情があるとき等限定があるので

注意が必要です。

2 共有の土地の変更、管理行為の容易化

これまで共有物の変更は、共有者全員の同意が必要とされていましたが、形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除いて共有持分の価格の過半数により決定することとさ

れました(民法251条1項)。

また、共有持分の価格の過半数で、共有財産の管理者を選任する制度(民法252条の2)や、共有者が行方不明の場合等に、裁判所が行方不明の共有者に代わり共有物の変

更や管理の許可をする制度(民法251条2項)が新設されました。

土地の共有者が行方不明等の場合にもできる行為が広がり、裁判所の許可を得る仕組みも整備されました。

3 不動産登記法上の登記の義務付け

亡くなった人名義の土地は、相続人が共有していることになりますが、相続人名義で登記しなくても制裁はありませんでした。

今回、補導さんの所有権の登記名義人が死亡し、不動産の所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったこと及び当該所有権を取得したことを知った日から3年以内

に所有権移転登記をしなければならず、正当な理由なく怠った場合は、10万円以下の過料に処されることになりました。

また、所有権の登記名義人が氏名や住所を変更した場合も、変更日から2年以内に変更登記をしなければならず、正当な理由なく怠った場合は、5万円以下の過料に処せられる

ことになりました。

4 今回の改正で、行方不明の隣地所有者や共有者がいてもできる行為が広がったわけですが、相続や住所変更の登記が義務付けられる等、一見すると法的トラブルと関係がない方も知らなければペナルティーが科せられるおそれがある重要なものです。詳細は弁護士までおたずねください。