最高裁判所が平成29年3月13日,保証債務の時効中断について興味深い判断を示しました。
(事案)
X・Yは,平成6年,XのAに対する貸金につき,Yが連帯保証する旨の公正証書を作成した。
Xは,平成16年12月,Yに対し,貸金の返還を求める支払督促の申立てをし,仮執行宣言付支払督促が確定した。
Xは,平成26年8月,Yに対し,保証債務の履行を求める訴訟を提起し,Yが消滅時効を援用した。
(最高裁の判断)
公正証書は,借り受けを証するためではなく,保証契約締結の趣旨で作成されたものであることを前提に,貸金返還請求権の根拠となる事実は,保証債務履行請求権の根拠となる事実と重ならず,保証契約の成立を否定するものであるから,貸金債権の行使により,保証債務履行請求権についても行使されたことになると評価することはできないとして,支払督促による時効中断を認めず,Yの消滅時効の援用を認めた。
(私見)
X側からすると,一般に,主債務に対して時効中断措置を講じれば,保証債務に対しても時効中断の効力が及ぶとされているので,平成16年の時点で,XがAに対しても支払督促を行っていれば,このような問題は生じなかったと思える。
Y側からすると,支払督促以外の時効中断の手段でも,請求を受けたり承認したのがどんな債権なのか確認し,時効消滅の可能性を見逃さないよう,注意する必要があると思われる。