カテゴリー別アーカイブ: 債務整理

自己破産の申立てに必要な通帳の集め方

1 自己破産の申立てには、通帳等の資料が必要

自己破産は、裁判所に申請して借金を0にしてもらう手続きです。

借金を0にしてもらう以上、目ぼしい財産が残っていないことを証明しなければならりません。

裁判所によりますが、少なくとも破産申立て前1年分の預金通帳の動きが必要になります。

自己破産を申請する裁判所は、名古屋市内にお住いの方なら名古屋地方裁判所というように、お住まいを管轄する地方裁判所になります。

集める資料は、その裁判所のルールに従うことになります。

 

2 通帳がない場合や合計記帳がある場合は、入出金履歴を取り寄せる

通帳を過去1年分というと、まずはお持ちの通帳をATM機で記帳します。

ただ、過去の分を捨ててしまっていると、1年分まで残っていないことがありま すし、そもそも通帳が発行されていないケースがあります。

また、長い間記帳してないと、合計記帳といって、何十件分もまとまった金額しか通帳に表れないことがあります。

このときは、該当期間の入出金履歴を取り寄せる必要があります。

インターネット上の銀行のホームページからマイページにログインして、入出金履歴が出力できればよいのですが、1年前までさかのぼれないことも多いです。

そうすると、銀行の支店に問い合わせて取得することになります。

このとき必要な資料や来店が必要かは、銀行の支店の判断になります。

 

3 通帳を紛失している場合は、通帳を再発行した方が便利なことが多い

通帳を紛失している場合は、この機に通帳を再発行した方が便利な場合が多いです。

というのは、自己破産では、最新の状態を記帳して教えてくださいと複数回言われる可能性があります。

手続に半年程度かかる以上、日々変動する可能性があるからです。

そうすると、入出金履歴を取り寄せただけでは、何度も入出金履歴を取り直すはめになりかねず、ATM機で記帳できるようにしておく方が便利なことが多いです。

 

4 届出印を紛失している場合は、改印手続で来店が必要になることが多い

通帳再発行でも入手金履歴の取り寄せでも、支店に来店が必要な場合は、銀行届出印が必要であるのが通常です。

届出印を紛失している場合は、改印手続という銀行届出印を今持っている印鑑に変える手続きが先に必要で、それが終わってからしか通帳再発行や入出金履歴の取り寄せができないのが通常です。

改印手続と入出金履歴の取り寄せで少なくとも2回来店することになるのが通常ですので、スケジュールに余裕を持って資料集めをしていただくことをお勧めします。

時効の援用が成功しなかった場合の対応

1 時効の援用が成功しない場合

時効の援用は、最後の借入や返済から長期間経過したときに、法律上正しい方法で主張して借金の支払義務をなくす手続きです。

消費者金融やカード会社からの借入は通常5年ですが、判決や裁判上の和解があればそこから10年間経過しなければ、時効の援用は成功しません。

また,債務の承認(借金があることを認める言動)があれば時効の完成が猶予されるので、返済をしていなくても、債権者と話し合いをして支払の約束をすれば、時効の援用が成功しないことがあります。

 

2 時効の援用が成功しない場合の債務整理の手続きの選び方

時効の援用が成功しなければ、何もしないか、何らかの債務整理を選択することになります。

債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産と大きく3種類あります。

このうち、時効の援用が成功しなかった方が個人再生を選択することは稀です。

なぜなら、個人再生は、裁判所に申請して、借金を減額して3~5年間で返済する手続きで、裁判所が継続的に返済する能力があると認める必要があります。

時効の援用を試みる方は、長期間返済していない方ですから、長期間返済できていなかった方がなぜ今後は返済できるのか、裁判所を納得させることが難しいからです。

そうすると、債務整理の中でも、弁護士が債権者と分割払いの話し合いをする任意整理か、裁判所に申請して借金を0にしてもらう自己破産のどちらかを中心に検討することになります。

 

3 時効の援用が成功しなかった場合の任意整理の注意点

任意整理は、利息をまけてもらって元金だけの分割払いにしてもらうことが多いです。

しかし、時効の援用を試みた方は、長期間返済しておらず、利息や延滞金は多額になっているはずです。

それだけ債権者を待たせておきながら元金だけの分割払いはめったに認められません。想定しているより多い返済額になるのが通常です。

 

4 時効の援用が成功しなかった場合の自己破産の注意点

自己破産する場合は、長期間返済していない間のお金の使い道が問題になります。

たとえば、債権者に返済できなくなった後に入ったお金が、無駄づかいや親族への返済に使われていれば、自己破産しても免責されない(借金が0にならない)とか、親族だけ優先して返済した分を取り返す必要が生じることがあります。

 

5 このように、時効の援用が失敗した後の債務整理には特有の難しさがありますが、経験値のある弁護士であれば、何らかの解決をみることが多いでしょう。

詳細は弁護士までおたずねください。

法人の破産費用と代表者の破産費用の区別

1 法人の破産費用は、法人の財産から、代表者の破産費用は代表者の財産から用意するのが原則

会社経営をしている方から廃業の相談にのっているときに、会社と代表者の破産費用の用意の仕方がよく問題になります。

会社が破産する場合、代表者が会社の借入の連帯保証人になっていることが通常です。会社が破産すると、連帯保証人の代表者も一括請求されるので、破産せざるをえないことが多いです。

ただ、建前では、会社と代表者は別人格で、それぞれ破産するかどうか検討します。

会社の破産費用は会社の財産から、代表者の破産費用は代表者の財産から用意するのが原則です。

2 会社の財産を代表者の破産費用に充てないと費用が用意できない場合の対処法

実際、会社は売上が入ってくるので破産費用を用立てることはできるが、代表者は会社の運転資金に充てて個人資産がほとんど残っていないというケースも多いです。

このとき、費用が用意できないので代表者が自己破産できないとすると、代表者はやり直しの機会がなくなってしまいます。

そこで、代表者が会社からお金をもらって破産費用を出すことを正当化できる理屈が必要になります。

たとえば、代表者から会社への貸付金がある場合は、その貸付金を回収して代表者の破産費用に充てたり、代表者が役員報酬をもらえていなければ、役員報酬をもらって代表者の破

産費用に充てたと説明することを検討します。

3 無条件に会社の財産で個人の破産費用を用意してよいわけではない

個人資産から十分に破産費用が用立てられるのに、会社の財産から代表者個人の破産費用を出すのは問題があります。

会社の破産管財人という裁判所が選ぶ第三者的立場の弁護士が、代表者個人に損害賠償請求をしたり、代表者の破産手続で免責(借金をチャラにすること)が得られない可能性

もあります。

また、会社の債権者から横領罪にあたると主張される可能性もあるので、破産費用の用立て方は十分な注意が必要です。

詳細は、会社の破産に詳しい弁護士におたずねください。

自己破産でローンのある車を残すための買い取り

1 自己破産すると、ローンが残っている車は引き上げられるのが原則

自己破産しても時価20万円以下の車は残るとよく言われますが、ローンが残っている車の場合は、別に考える必要があります。

自己破産する場合、車のローンも含めてすべての債務の返済をやめなければなりません。

車のローンを約束どおり払わなければ、ローン会社に所有権が残っていることが多いので、ローン会社に車を引き上げられてしまうのが原則です。

この場合、時価が20万円以下であっても、車のローン会社が引き上げると決めれば返還しなければなりません。

2 ご親族が車のローンを完済することは可能

自己破産する場合に返済をやめなければならないのは、自己破産する本人です。

自己破産しない親族等が車のローンを援助することは法律上可能です。ご親族が一括で車のローンを払えば、ローン会社に車を引き上げられることはありません。

ローン会社が引き上げなければ、車の時価が20万円以下であれば、基本的に自己破産する方の名義のままでも手元に残せることになります。

3 車のローン残額と車の時価に注意が必要

自己破産する方の名義のままでは、親族がローンを完済しても、車の時価が20万円以上であれば、手元に残らないことになりかねません。

そこで、お金を払ってくれた親族に車を買い取ってもらったことにして、名義変更することが考えられます。

ただし、この方法は、車のローン残額が車の時価より多い場合でないと、破産法上問題があります。

たとえば、車のローン残額が100万円、車の時価が60万円なら、相場が60万円の車をご親族が100万円で買い取ったことになるので、問題ないと考えられます。

一方、車のローン残額が40万円で、車の時価が60万円なら、相場が60万円の車をご親族が40万円で買い取ったことになり、問題があります。

破産法は、時価より安くで財産を処分することを禁止しているので、破産管財人という裁判所が選ぶ弁護士に車を取り返されたり、借金がチャラにならない(免責不許可)の

リスクがあります。

4 まとめ

ローンが残っている車の買い取りには、法律上難しい問題がありますので、自己破産に詳しい弁護士に相談してから実行するようにしましょう。

自己破産と個人再生の違い

1 自己破産と個人再生はどちらも裁判所を通じてする借金の整理の手続き

弁護士として借金の整理の相談をお受けしていると、自己破産と個人再生は何が違うのかとよく聞かれます。

実際この2つは似ている点も多く、以前、依頼者さんでもどちらの手続きを依頼しているのか分からなくなっていた方もいらっしゃいました。

ここでは、自己破産と個人再生の違いを大きな点にしぼってお伝えします。

2 借金を返さなくてよくなるのが自己破産、借金を少しは返す必要があるのが個人再生

一番分かりやすい違いは、自己破産では借金は基本的に0になりますから、手続きを依頼して以降、借金の返済はしなくてよくなります。

一方個人再生は、借金は5分の1など大きく減るものの、0にはなりません。3年から5年かけて返済しなくてはなりません。

このため、個人再生の裁判所での手続きが終わっても、減った借金が払えなくなれば解決になりません。

借金と縁を切って早く楽になりたいと思えば自己破産がよいということになります。

3 持ち家が残らないのが自己破産、自宅が残るのが個人再生

もう一つ大きな点は、自己破産は目ぼしい財産がなくなってしまうことです。

持ち家は典型的ですし、時価20万円以上の車や生命保険がなくなることもあります。

一方の個人再生は、持ち家を住宅ローンを払い続けて残すためによく使われます。

車もローンを完済できていれば残りますし、解約すれば大きな金額が返る保険も残すことができます。

このため、残したい資産がある方が個人再生を選ぶ傾向にあります。

4 借金が増えた経緯が悪いとできないのが自己破産、借金が増えた経緯が悪くてもできるのが個人再生

自己破産は、借金を返済しない以上、借金が増えた経緯という過去の出来事が非常に重視されます。

ギャンブルや投資の失敗が主な原因で借金が増えた方は、自己破産しても免責されず、借金が残ったままになることがあります。

一方個人再生は、借金が増えた経緯よりも今後返済していけるかという将来の見込みが重視されます。

ギャンブルや投資の失敗が主な原因でも、今後ギャンブル等をせず、収入の範囲内で返済できれば手続きは認められます。

このため、借金が増えた経緯が悪い方は、個人再生を選ぶ傾向にあります。

従業員がいる会社の倒産に伴う手続き

1 従業員がいる会社の倒産は、様々な手続きが必要

従業員を雇っている会社が事業をやめる場合、従業員がいない場合と違って様々な手続きが必要になります。

ここでは、その一例と対応方法を紹介します。

2 離職票の発行

雇用保険に加入している従業員がいる場合、会社が事業をやめれば失業保険を受給できるケースが多いです。

失業保険を受給するためには、離職票の発行が必要です。

離職票は、会社破産の場合、過去6ヶ月間の賃金の額から失業保険の額を決めたり、会社都合か自己都合かによっていつから失業保険がもらえるかが異なるため、

正確に作成する必要があります。

会社であれ個人事業者であれ、従業員を解雇してから10日以内に発行するのが原則であり、社会保険労務士等の専門家に依頼することもあります。

3 社会保険の資格喪失

厚生年金や会社の健康保険に加入している従業員がいる場合、会社が事業をやめるならその社会保険から脱退する必要があります。

従業員は、国民年金や国民健康保険に加入するか、任意継続という従業員自身が掛け金を払うことで今までの資格を継続するかを選択することができます。

会社が社会保険事務所に資格の喪失届を出さないと、従業員は健康保険がない状態になり、医者にかかるにも全額負担となるおそれがあります。

4 住民税等の特別徴収の異動届

会社が従業員の給料から住民税を天引きしている場合、会社が事業をやめるなら源泉徴収しなくなる分、従業員個人で住民税を支払う必要が生じます。

住民税を天引きすることを特別徴収といい、これを従業員個人で支払う普通徴収に切りかえるための届出なので、特別徴収の異動届と呼んでいます。

役所は、会社が倒産したことを自動的に知るわけではないので、従業員が居住する自治体に、住民税の特別徴収の異動届を出す必要があります。

5 源泉徴収票の発行

従業員の源泉徴収をしていた場合、源泉徴収票を発行する必要があります。

従業員は、次の勤務先の給料と合わせて年末調整して税金の還付を受けたりするのに使います。

顧問の税理士にお願いすることも多いですが、会社破産で税理士報酬が未払いの方等は、社長自身で作成するか、別途専門家に依頼することもあります。

6 このように従業員がいる会社が倒産する場合、様々な手続きを急いで進める必要があります。

会社破産は、税理士や社会保険労務士とも連携がとれる弁護士に依頼すると、従業員関係の手続きも円滑に進みやすいでしょう。

未払給料立替払制度の注意点

会社が破産する際に、従業員の給料を払いきれないことは珍しくありません。

このとき、独立行政法人労働者健康福祉機構の立替払制度を利用することが多いです。給料が払われず生活に困る従業員さんにとって、役に立つ制度であること

は間違いありませんが、使えないケースもありますので、注意が必要です。

1 支払いまで最低3ヶ月程度かかる

立替払制度は、①未払給料額に関する資料を集める②未払給料額の計算を終

えて申込書類を従業員宛てに送付する②破産管財人が内容を検討して証明する

③立替機構が内容を検討して支払う と何度も資料と書類のやりとりがありま

す。

どんなに早くても、本来の給料日より3ヶ月程度遅れてしか支払いは受けら

れません。

2 事業開始1年未満の廃業や解雇から6ヶ月経過後の破産申立てでは使えない

立替払の要件として、事業が1年以上継続していることや、解雇から6ヶ月

以内に破産申立てをしたこと等があります。

これら事業者側の要件によって、立替払制度が使えないケースもあります。

3 解雇予告手当や賞与は対象外

立替払制度の対象になるのは、定期賃金と退職金です。

突然解雇されたことで、平均賃金の30日分の支払を受ける権利がある解雇

予告手当や、定期できなく臨時に支給されるだけの賞与は、立替払いの対象で

はありません。

4 金額は最高8割まで

立替払制度では、最高で未払い金額の8割までしか払われません。

また、30歳未満は110万円まで、30歳以上45歳未満は220万円ま

で等、金額による上限もあります。

5 役員、親族、下請けは使えないケースが多い

立替払制度は、あくまで生活に困る従業員の保障ですから、代表者や取締役

は使えないのが原則です。

親族の従業員も、従業員と同様の勤務実態が証明できれば使える可能性はあ

りますが、認められないことも多いです。

下請業者や外注は、従業員ではないので、対象外です。

6 事業をやめるとしても、従業員に迷惑をかけたくないと考える代表者さんは

大勢いらっしゃいます。

立替払制度は安心材料の1つになりますが、やはり給料が払いきれな

くなる前に、事業をやめる決断をすることが大切です。

立替払制度の詳細は、弁護士までおたずねください。

 

 

司法修習生の指導

1 司法修習生とは

私が所属する愛知県弁護士会の倒産実務委員会で、司法修習生向けに自己破産と個人再生の事例に基づく指導を行う機会がありました。

司法修習生とは、弁護士、裁判官、検察官になるための研修生のことです。

司法試験を受験して合格した人を対象に、約1年間、弁護士、裁判官、検察官の実務を見学することを通じて、実際に弁護士、裁判官、検察官になったときに第一線で活躍

できるようにするための制度です。

当日は、仮設事例をもとに、司法修習生が事前に回答案を作成し、私ともう1人の弁護士で回答を検討しました。

一般の方にも役に立つよう、少し事例をかえて解説します。

2 自己破産の案件

建築業を営む個人事業者で、財産として預金10万円、ローンのない時価60万円の車、解約返戻金80万円の保険、売掛金50万円などがあります。

この方が自己破産するとき、車が残るかどうかや、手続きの費用をどうやって用意するか等検討しました。

車は、必ず残るとは限りませんが、自由財産拡張といって、生活にどの程度必要かや今後の収入の見込み等を丁寧に主張することで、残せる可能性が十分あると思われます。

また、手続きの費用は、保険を解約したり、売掛金を回収することで、用立てるのが通常でしょう。

これは、自己破産で残せる財産は原則99万円までであり、車60万円と保険80万円の両方が残ることはないと見込めますから、保険は解約して費用に充てる方が有効な使い

方であるからです。

3 個人再生の案件

サラリーマンが、A社から100万円、B社から100万円、C社から200万円、D社から200万円、E社から住宅ローン2000万円を借り入れしているとします。

財産として時価1500万円の自宅、預貯金10万円、時価50万円の車があるとき、個人再生をするとどこまで返済額が減るか等検討しました。

個人再生では、住宅ローンは約束どおり返済し、うまくいけば他の借金が5分の1まで減るので、A社からD社の600万円が120万円まで減ります。

返済期間は、3年から5年ですから、住宅ローン以外の毎月の返済額は、2万円~3万4000円程度になります。

 

 

自己破産したときに残る保険と残らない保険

1 自己破産すると目ぼしい財産を手放す必要がある

自己破産は,財産をお金にかえて債権者に分け,それでも残る債務(借金)の支払義務を,裁判所を通じて免除してもらう手続きです。

自己破産すれば,原則として全ての債務を支払わなくてよくなりますが,代わりに目ぼしい財産は手放さなければなりません。

「目ぼしい財産」と書いたのは,自己破産しても価値が低く,生活に必要最小限の財産等は手元に残るからです。

2 自己破産しても残る財産の決め方

破産法によると,自己破産して財産が残るかは,破産者の生活状況,財産の種類・金額,破産者が収入を得る見込みその他の事情を総合的に考慮して判断されます(破産法34条4項)。

財産の金額は,保険の場合は,破産手続開始決定時の解約返戻金額(仮に解約した場合に戻ってくる金額)です。

この規定は抽象的で,実際は,裁判所ごとに,それぞれどのような財産を残すことを認めやすいかについて基準を定めており,その基準に従って判断されます。

したがって,裁判所ごとに運用が異なり,たとえば名古屋にお住いの方であれば名古屋の裁判所の運用によることになりますが,ここでは一般的な考え方を紹介したいと思います。

3 自己破産しても残りやすい保険と残りにくい保険

保険には,自動車保険,火災保険,生命保険等様々な種類があります。

このうち,自動車保険は,自分で使っている自動車1台分であれば,ほとんどの場合は残ります。

自動車を運転する限り任意保険に加入していないと,大きな損害賠償金を負担することになりかねないので,自動車を残すことを認めるならば一緒に残すことが通常認められます。

妻子の車の自動車保険もかけている場合は,妻子自身がかけることができないか検討されますが,もともと解約しても返戻金が少ないこと等から,残るケースが多いといえます。

火災保険は,賃貸の自宅についている保険は,解約してもわずかな金額しか返ってこないことや,賃貸借契約で,火災保険に入っていることが入居の条件になっていることが多く,なくなると退去せざるをえないのは酷ですから,ほぼ手元に残ります。

一方,自己所有の自宅の火災保険は,自己破産により自己所有の自宅は手放すのが通常ですから,火災保険だけ残す必要はないため,ほぼ手元に残りません。

生命保険は,何口あるかや誰を被保険者にしているかと,解約して返ってくる金額によって判断が分かれるものです。

一般に,99万円を超える返戻金がある生命保険は,残りません。

また,20万円から99万円の返戻金がある生命保険も,何口もあるようであれば,1口を除いて手元に残らない例が多いと思われます。

一方,20万円を下回る返戻金しかない保険や掛け捨ての保険は,残る可能性が高く,また,病気で二度と保険に入れない人は残りやすい傾向があります。

4 自己破産しても保険が残るかどうかは,保険の種類や解約して返ってくる金額のほか,他の人が保険をかけることができないかや今後の生活にどの程度必要か等,

様々な事情を考慮して決められますので,自己破産の経験豊富な弁護士に相談のうえ,裁判所や管財人に意見を述べてもらうことになります。

 

 

 

自宅の任意売却と競売

1 任意売却と競売

自己破産等の債務整理に伴って自宅を手放す場合に,任意売却と競売のどちらを選ぶのがよいかという質問をよくいただきます。

任意売却は,自ら不動産業者を選んで不動産を売りに出すことです。

競売は,債権者が裁判所を通じて強制的に不動産を売ることです。

2 任意売却のメリット

任意売却は,競売より高値で売れるため,連帯保証人がいる場合等は少しでも残る債務が少なくなるメリットがあります。

また,協力してくれた対価として,債権者や買主との話し合いで,引越協力金等の名目のお金をもらえることがあります。

競売はBITと呼ばれるインターネット上のサイトに情報がのるため,近隣住民等に借金が払えずに競売になったことが知れる可能性が十分あるのに対して,

任意売却の場合は,近隣住民等には普通に不動産を売り出しているだけに見えるので,借金のことが知れる可能性が低くなります。

3 競売のメリット

任意売却では,不動産業者とのやりとりや,購入を検討される方が家の中を見に来るのに立ち会う等の手間がかかるのに対して,競売は,債権者が手続きを進めるので,裁判所の職

員が1回自宅を見に来るのに立ち会う以外は,ほとんど手続きの手間がかかりません。

また,任意売却は,自分で売り出している以上,不要な家具等を置いていくことことはできず,廃棄物処理業者に頼んで処分しなければならないことも多いですが,

競売の場合は,放置しておいても買主が処分してくれることが多いといえます。

4 まとめ

このように,任意売却と競売にはそれぞれメリット・デメリットがあります。

ちょうど,任意売却のメリットが競売のデメリットになり,競売のメリットが任意売却のデメリットになるという関係です。

私に依頼いただいて任意売却を検討される方には,任意売却の経験豊富な不動産業者をご紹介することもできます。

任意売却は,通常の不動産売買と異なり,債権者との交渉も必要になります。

たとえば,住宅ローンが1000万円残っている不動産で,売っても600万円程度しかならない場合,住宅ローンの債権者は,完済できていないため抵当権を抹消できないはず

ですが,これ以上では売れないこと等を理解してもらって,交渉により抵当権を外してもらう必要があるのです。

このように,不動産業者の中でも任意売却の経験豊富な業者を選ばなければ,任意売却もうまくいきません。

詳細は,弁護士におたずねください。