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債務整理を依頼した後に財産を減少させる行為

自己破産や個人再生を依頼した後に,自動車の所有者の名義をかえたり,保険の契約者を変更したりすると,どうなるのでしょうか。

自己破産や個人再生をする方が所有している自動車の所有者の名義を,ご親族にかえると,本来であれば債権者に分けられる可能性のあった財産を故意に減らしたことになります。

自己破産や個人再生を依頼した後は,このように財産を故意に減らす行為をすると,自己破産であれば免責が得られず,借金の支払義務が残る可能性が高くなります。

また,ご親族に名義を変える行為を管財人が否認し,名義を自己破産する方に戻してくることになります。管財人が,ご親族の方を相手に裁判等をすることもあります。

個人再生でも,債権者に支払うべき額が増加したり,そもそも個人再生が不当な目的でされたものとして認められない可能性があります。

そうはいっても,生活に困って保険等を解約せざるをえないこともあるはずで,どのような行為が財産を故意に減らす行為に当たるかは,微妙なケースもあります。

自己破産・個人再生等を依頼した方が,無断で,財産を処分・解約したり名義をかえたりすれば,弁護士が辞任することも珍しくありません。

必ず事前に依頼した弁護士にご相談されることをお勧めします。

保証債務と時効の中断

最高裁判所が平成29年3月13日,保証債務の時効中断について興味深い判断を示しました。

(事案)

X・Yは,平成6年,XのAに対する貸金につき,Yが連帯保証する旨の公正証書を作成した。

Xは,平成16年12月,Yに対し,貸金の返還を求める支払督促の申立てをし,仮執行宣言付支払督促が確定した。

Xは,平成26年8月,Yに対し,保証債務の履行を求める訴訟を提起し,Yが消滅時効を援用した。

(最高裁の判断)

公正証書は,借り受けを証するためではなく,保証契約締結の趣旨で作成されたものであることを前提に,貸金返還請求権の根拠となる事実は,保証債務履行請求権の根拠となる事実と重ならず,保証契約の成立を否定するものであるから,貸金債権の行使により,保証債務履行請求権についても行使されたことになると評価することはできないとして,支払督促による時効中断を認めず,Yの消滅時効の援用を認めた。

(私見)

X側からすると,一般に,主債務に対して時効中断措置を講じれば,保証債務に対しても時効中断の効力が及ぶとされているので,平成16年の時点で,XがAに対しても支払督促を行っていれば,このような問題は生じなかったと思える。

Y側からすると,支払督促以外の時効中断の手段でも,請求を受けたり承認したのがどんな債権なのか確認し,時効消滅の可能性を見逃さないよう,注意する必要があると思われる。

 

 

 

給料の差押え

約束どおり債務を払えない状態が続くと,裁判を起こされ,給料の差押えを受けることがあります。

給料の差押えを受けると,任意整理では,他の債権者への支払が難しくなりますし,差押えを交渉でやめてもらうことはほぼ不可能です。

また,給料の差押えにより,勤務先に借金のことが知れるうえ,勤務先が差押えを受けた方と差押えをした債権者に給料を分けて払わなければならなかったり,勤務先が裁判所に書類を提出する

必要が生じるので,勤務先から事実上不利益な扱いを受けることになりかねません。

基本的に,給料の差押えをとめるには,差押えした債権者に完済するか,自己破産か個人再生の申立てを裁判所にしなければなりません。

しかし,給料の差押えを受けた後では,自己破産や個人再生の費用の捻出もできないケースが少なくありません。

給料の差押えを受ける前には,裁判を起こされ,裁判所から何らかの書類が届いていることがほとんどです。

遅くとも,裁判所から何らかの書類が届いた段階では,弁護士等の債務整理の専門家に相談しなければ,解決の方法がなくなってしまうこともあります。

 

2月

2月になりました。

インフルエンザや風邪が流行しているようで,私もインフルエンザではなかったものの,1月末頃には喉を痛めて声があまり出ない状態になっていました。

弁護士は,依頼者さんや相手方を言葉で説得できなければ仕事になりませんし,打合せや裁判等の期日も代わりに出席してもらうことは難しいケースが多いです。

民事裁判の期日の変更は,「顕著な事由がある場合に限り許す」と規定され,弁護士が体調不良でも本人が行けばよい,同じ事務所の別の弁護士が行けばよいと法律は考えているのです。

弁護士が体調不良であることを理由に,裁判の日をかえてもらうのは難しいということになります。

 

 

 

 

利息カットで得する金額

任意整理の大きなメリットの一つに,利息をカットしてもらえる場合が多いことがあります。

これだけでも50万円を超える利益が生まれることがよくあります。

たとえば,元金が195万円で利率15%を借り入れ,毎月の返済額が4万6000円程度の方が,このまま返済を継続すると,61回(5年1ヶ月)で275万円程度支払って完済することになるそうです。

任意整理では,利息を0にしてもらって元金のみを60回分割(5年)で返済することが広く認められています。

元金195万円とすると,毎月の返済額は3万2500円です。

返済の総額も毎月の支払額も,任意整理しない場合の70%程度におさまっています。

結局,元金195万円に対し,80万円も返済額が少なくなりました。

このように,利息カットのメリットは非常に大きなものがあります。

1月

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

1月は多くの事務所で新しい弁護士が入所する月です。

弁護士になるための試験の合格発表が12月中頃にあるためです。

当事務所も多くの弁護士が入所しました。

私も最初に入所したときのことを思い出すと,弁護士になってやりたい多くの夢や目標を持っていました。

未だ一部しか実現できていませんが,私に既にご依頼いただいている皆さまのお役に立てるよう,精進してまいります。

 

少年事件の記録の閲覧の制限

非行をした少年の弁護を引き受けると,弁護士は,家庭裁判所に事件の記録を読みに行きます。

事件の記録には,少年が犯したとされる非行の証拠や,家庭環境等について裁判所が調査した結果も載っており,少年の弁護をするうえで非常に重要です。

平成28年12月1日から,少年審判規則の改正により,記録の閲覧に制限が加わることになりました。

閲覧させることにより,人の身体や財産に害を加えたり,又は人を畏怖させたり困惑させたりする行為や人の名誉や社会生活の平穏を著しく害する行為がなされるおそれがある事項が記載・記録されている部分があると認められるとき,裁判所は付添人(弁護士等)に対し,少年若しくは保護者に知らせてはならない旨の条件を付すこと,又は少年若しくは保護者に知らせる時期若しくは方法を指定したり,記録の閲覧を禁ずることができるようになりました(少年審判規則7条3項,4項)。

最高裁判所によると,この改正の趣旨は,事件関係者が,自分の氏名や住所が少年や保護者に特定されて,生命・身体の安全が脅かされるかもしれないという不安を抱き,裁判所の手続きや捜査への協力を拒否する事例がありえたことから,関係者がより安心して情報を提供することができるようにしたとのことです。

たしかに,関係者がより安心して情報を提供できるようにする必要がないとはいえませんが,一方で,弁護士が記録を閲覧できないと,少年が非行をやっていないと主張している場合に冤罪を防ぐためにどの程度証拠があるのか把握しづらくなったり,少年の将来を考えるうえで必要な情報まで把握できなくならないか心配もあります。

 

2種類の個人再生

個人再生には,小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。

小規模個人再生は,債権者の半分以上が反対しないことが条件となりますが,一般的にはこちらを選択する方が多いです。

給与所得者等再生は,債権者の賛成がいらない代わりに,可処分所得の2年分を上回る金額を返済しなければなりません。

可処分所得の2年分とは,収入から最低限の生活費や税金等を差し引いた残りの金額であり,収入が多い人や扶養家族の少ない人は,高額になるケースが多いです。

また,債権者が反対するケースは少ないので,債権者の半分以上が反対しないという要件を満たすことは,それほど困難でないケースの方が多いでしょう。

したがって,小規模個人再生を選択する方が多いのですが,しばしば反対する債権者もいるので,そのような債権者から多額を借り入れている方は,給与所得者等再生を選択することもあります。

二回試験の終了

二回試験は,司法試験に合格して司法修習という研修を受けた修習生が,弁護士・検察官・裁判官になるために必要な能力を身につけたかをみる試験です。

今年は,平成28年11月18日から始まって11月25日に終わったようです。

受験した皆さま,お疲れさまでした!

今年の合格発表は,12月13日で,これに合格すると,晴れて弁護士登録をすることができます。

 

花押を書いた自筆証書遺言

一般的に使われる遺言には,自筆証書遺言と公正証書遺言の2つがあります。

このうち,自筆証書遺言は,遺言をする方が,全文,日付,氏名を自書し,これに印を押さなければならないと定められています。

押印する代わりに花押を書いた場合,有効な遺言といえるか争われた事例がありました。

最高裁判所平成28年6月3日判決は,押印を要求した趣旨を,重要な文書については作成者が署名したうえその名下に押印することによって文書の作成を完結させるという日本の慣行や法意識に照らして,真意に基づいてその人が文書を作ったことの証としていると述べ,日本で,印鑑の代わりに花押を書くことによって文書を完成させる慣行や法意識が存在するとは認めがたいとして,有効な遺言とはいえないと結論づけました。

自ら作る遺言は,意外なところで有効と認められない危険があります。

遺言書の作成を検討していらっしゃる方は,一度,専門家に形式面でも内容面でも問題がないか確認されることをお勧めします。