日別アーカイブ: 2020年1月31日

全国倒産処理弁護士ネットワーク

昨年末,全国倒産処理弁護士ネットワークという,倒産案件を扱う弁護士の団体が主催するシンポジウムに出席してきました。

全国倒産処理弁護士ネットワークは,少なくとも毎年1回,裁判官や倒産法の世界で著名な研究者も招いて,倒産法や倒産案件の処理に関するシンポジウムを開いたり,

倒産案件に関する著書を出版しています。

名古屋で行われたシンポジウムで,名古屋地方裁判所の裁判官の運用に関する講演を聞いたほか,近年の最高裁判所の判例をめぐる議論がありました。

最高裁平成30年12月7日判決は,簡単にいうと以下のような事案です。

自動車部品メーカーのYは,金属スクラップ販売業者Aに対して販売する金属スクラップに,代金の完済をもって所有権がYからAに移転するという所有権留保の合意をしていました。

その後,金融機関XがAに対して融資する際,Aの所有する在庫商品等について集合動産譲渡担保を設定し,動産譲渡登記もされました。

Aが債権者に事業を閉鎖する旨通知し,YがAに対し動産引渡断行の仮処分を申し立てて認容され,金属スクラップを引き上げたのに対し,XがYに,譲渡担保権を主張して争いました。

判決は,AY間の合意は,目的物の引渡しからその完済までの間,その支払いを確保する手段を売主に与えるものであって,その限度で,目的物の所有権を留保するものである。

売買代金が完済されるまで金属スクラップの所有権は移転しないから,「Aの所有する在庫商品」になっておらず,XがYに譲渡担保権を主張することはできないとして,Yを勝訴させました。

平成22年の最高裁判例で,車のローン会社が所有権留保権を破産管財人等の第三者に対抗するには,対抗要件を備えていなければならないというものがありましたが,平成30年判決は,Yの対抗要件について言及せずYを勝訴させていることから,破産・民事再生等の法的整理が行われていない点で平成22年判決と違うのか,集合動産譲渡担保が所有権留保に劣後するのか等,解釈をめぐって様々な考え方が出ています。

今後の倒産実務の動きが注目されます。