1 司法修習生とは
私が所属する愛知県弁護士会の倒産実務委員会で、司法修習生向けに自己破産と個人再生の事例に基づく指導を行う機会がありました。
司法修習生とは、弁護士、裁判官、検察官になるための研修生のことです。
司法試験を受験して合格した人を対象に、約1年間、弁護士、裁判官、検察官の実務を見学することを通じて、実際に弁護士、裁判官、検察官になったときに第一線で活躍
できるようにするための制度です。
当日は、仮設事例をもとに、司法修習生が事前に回答案を作成し、私ともう1人の弁護士で回答を検討しました。
一般の方にも役に立つよう、少し事例をかえて解説します。
2 自己破産の案件
建築業を営む個人事業者で、財産として預金10万円、ローンのない時価60万円の車、解約返戻金80万円の保険、売掛金50万円などがあります。
この方が自己破産するとき、車が残るかどうかや、手続きの費用をどうやって用意するか等検討しました。
車は、必ず残るとは限りませんが、自由財産拡張といって、生活にどの程度必要かや今後の収入の見込み等を丁寧に主張することで、残せる可能性が十分あると思われます。
また、手続きの費用は、保険を解約したり、売掛金を回収することで、用立てるのが通常でしょう。
これは、自己破産で残せる財産は原則99万円までであり、車60万円と保険80万円の両方が残ることはないと見込めますから、保険は解約して費用に充てる方が有効な使い
方であるからです。
3 個人再生の案件
サラリーマンが、A社から100万円、B社から100万円、C社から200万円、D社から200万円、E社から住宅ローン2000万円を借り入れしているとします。
財産として時価1500万円の自宅、預貯金10万円、時価50万円の車があるとき、個人再生をするとどこまで返済額が減るか等検討しました。
個人再生では、住宅ローンは約束どおり返済し、うまくいけば他の借金が5分の1まで減るので、A社からD社の600万円が120万円まで減ります。
返済期間は、3年から5年ですから、住宅ローン以外の毎月の返済額は、2万円~3万4000円程度になります。