個人再生の手引き

「個人再生の手引き」という,東京地方裁判所の裁判官が編者となっている個人再生に関する本の第2版が,平成29年6月末に発売されました。

アマゾンでは,発売当初は売り切れていましたが,ようやく手に入れることができました。

住宅ローンのある自宅マンションの管理費が滞納になっている場合は,原則として自宅を残すことができないことや,個人再生手続が認められた後に再生計画にしたがった返済ができなくなって,再度個人再生の申立てをする際の注意点等が加筆されていました。

 

債権者破産

破産は,破産せざるをえないと判断した会社や個人が,自分の意思で裁判所に破産したいと申立てをするのが通常です。

これを自己破産と呼んでいます。

これ以外に,破産の申立ては,債権者もすることができ,債権者破産と呼ばれます。

債権者破産は,債権者が,債務者が財産隠しを行っている等誠実な返済が見込めないと考えた場合に,破産の申立てをして,裁判所に管財人を選任してもらうことで,管財人の権限を使って財産を調査したり,債権の回収を図る方法です。

債権者破産の場合,申立てをする債権者は,相当な金額を裁判所に納めなければならず,債務者の財産が少ない場合は,かえって損をする可能性があります。

一方,破産手続きでは,破産させられる債務者は,管財人に対し,重要な財産を開示したり,求められた事項を説明する義務を負い,違反すれば刑事罰を受けることもあります。

管財人は,郵便物の転送も受けることができるため,通常債権者が把握できない財産を発見できますし,破産者が財産を処分する権利を失わせることができるので,財産隠しを行うのを防ぐ効果もあります。

 

 

法的整理と私的整理

会社や個人事業主が,事業性の借入金等を債務整理するとき,法律に基づいて半ば強制的に債務を減額するか,債権者との話合いを通じて債務整理をするかで大きく2つに分かれます。

前者を法的整理と言い,自己破産や民事再生(個人事業主では個人再生が一般的です。)がこれにあたります。

後者は私的整理と言い,債権者と相対で話合いをするものもありますし,第三者的な立場の機関に関与してもらって話合いをする場合もあります。

法的整理の場合,原則として全ての債権者を対象に減額してもらわなければならないため,取引先に対する支払いも約束どおりできなくなることが多く,一般に知れ渡ることが多いため,信用が傷ついて事業を続けていくのに支障が出ることもあります。

私的整理では,金融機関だけを相手にすることが多く,取引先や下請を保護したり,一般に知られずにできることも珍しくありません。

一方,私的整理では,原則として対象となる全ての債権者が同意しない限り債務の支払条件を変えられないため,一人でも反対する債権者がいれば,債務整理ができないことになります。

また,私的整理では,話合いに時間がかかるうちも最低限利息だけは支払い続けなければならないことが多く,途中で資金繰りがつかなくなれば,事業が成り立たなくなってしまいます。

そこで,会社や個人事業主の債務整理の相談を受けた弁護士は,事業継続の意思,債権者の顔ぶれ,資金繰り等を考慮して,法的整理か私的整理か決めるためのアドバイスをさしあげることになります。

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未払賃金立替払制度の証明者

未払賃金立替払制度を利用する場合,誰が未払いの賃金額等について証明するかは,大きく2つに分かれます。

1つ目は,破産管財人です。

破産手続開始決定がなされている場合は,破産管財人という裁判所が選任した第三者的な立場の弁護士が,賃金台帳,タイムカード,就業規則等を確認して未払賃金の額を証明するのが通常です。

2つ目は,労働基準監督署長です。

自己破産の申立てがされていない事実上の倒産状態のときや,破産手続開始決定が出ているが,破産管財人が未払賃金額等を証明できないと考えたときに,労働基準監督署長が認定する制度があります。

未払賃金立替払制度

法人や個人事業主が自己破産する場合,従業員の給料が払えないままになっていることがよくあります。

この場合,独立行政法人労働者健康安全機構の未払賃金立替払制度を検討することになります。

未払給料のうち8割程度まで支払われますが,解雇予告手当は対象外とされているほか,勤務時間や勤務実態が不明瞭で証明が困難な場合は,支払いが受けられないケースもあるので,注意が必要です。

税金の滞納

債務整理の依頼者さんには,税金や国民健康保険料を滞納している方が少なくありません。

税金や健康保険料は,消費者金融やクレジットカード会社と異なり,裁判をせずに給料等の差押えができるうえ,債務整理をしても,基本的に支払義務は残ったままです。

ただし,法人の税金や健康保険料は,法人が破産すると主体がなくなるので,支払義務もなくなります。

 

7月

7月になりました。

債務整理の依頼者さんで,6月から7月にかけてボーナスが入る方も少なくありません。

債務整理をされている方は,ボーナスを計画的に使うことが,経済的に立ち直るために重要ですから,ボーナスの使い道について弁護士とよく相談することをお勧めします。

 

倒産法委員会

昨日は、個人再生や自己破産に関して、裁判所が提出書類等についてまとめた要望書を検討しました。
次回は、司法修習生向けの問題や回答を検討する予定です。

子どもの権利委員会

名古屋駅から徒歩10分程度の場所に、子供の人権相談という電話での法律相談の担当に行ってきました。

子どもの問題は、子ども自身の意向なのか親の意向なのか区別がつきにくいことも多く、子どもと親で利害が対立することさえあるので、注意が必要です。

借金の相続

借金した人が亡くなった場合、借金(債務)は法定相続分に応じて分割されて相続人に引き継がれるのが原則です。
相続人同士で、財産を引き継ぐ人が借金も全部引き継ぐなど取り決めても、債権者には通用しないので注意が必要です。

債務を相続したくない方は、期限内に家庭裁判所を通じて相続放棄をするのが王道です。詳細は弁護士までお尋ねください。